年配の同窓生には「馬城」「目城」「めじろ」という名で親しまれた懐かしい年刊誌をご記憶の方も多いことと思います.ふとしたことから,図書館の学園資料室に大切に保存されている「めじろ72号」(1955年発行・発行人村松定孝)を手にする機会がありました.何気なく頁をめくっていると「ワンダーフォーゲル」と題された森本悌次,打矢之威 (昭31卒)両氏が寄稿された一文に目がとまりました.「今年から獨協にワンダーフォーゲル部が創立されましたが・・・」で始まる文章には,ドイツで誕生 したワンダーフォーゲルという国民的自然生活運動を天野貞祐先生のお話と重ね合わせ,「正直,勤勉,清潔,規則正しく」という四つのことを実行することに 他ならないと記されてあり,併せて創部時の諸先輩の方々の自然に対する熱意も語られていました.数えてみるとワンダーフォーゲル部が創られてかれこれ50 年になることも分かりました.偶然にも,私が現在クラブ顧問としてかかわっているワンダーフォーゲル部創部当時の状況を知り,先達の方々の苦労と熱き思い を垣間見て少なからず感動を覚えました。クラブ活動はその時代を反映し,栄枯盛衰を繰り返し受け継がれていますが,どのような経緯を経て今日に至っているか,現役部員には明らかでない場合が多いようです.そこで,創部50年を記念して,OBと現役の交流を 合同登山を通して実現させたいとの考えが抑えがたくなり,OB会に打診したところ,多くのOBの方々から賛同を得,実現の運びとなりました.登る山も記念 登山に相応しい北海道の大雪山・旭岳と決まりました.遠隔地でもあり合宿地の制限や現役部員の負担など解決しなければならない問題もありましたが,幸いに もOB会から団体装備と遠征費用にと,多額のご寄付をいただき難問も解決し,先輩方の激励もあり準備も整いました。
全コースをOBと現役が一緒に歩くことには制約もあり,第一日目の旭岳だけの合同登山となりました.参加メンバーは,創部当時を熟知し,還暦を過ぎた今でも元気に山登りを続けられている若井永(昭32卒),井上正巳(昭32卒)夫妻,千野一郎(昭33卒),常盤雪夫(昭35卒)と,若い世代のOBからは大橋友徳(平10卒),半田諭志(平12卒),石鍋健太(平13卒)が参加し,現役部員である中高生10人及び顧問2人の大所帯となりました.盛んに白い噴煙を上げる爆裂火口の地獄谷を左に見ながら、火山礫のガラガラしたきつい登りに果敢に挑み頂上をめざしました。北海道の最高峰からの眺めは正に雄大で、一同、征服感に浸りながらOBと現役の心が一つになったのを感じたひと時でした。
現役の諸君らは、これから50年、同行の先輩方と同じ年齢になる頃、ワンダーフォーゲル部は創部100年を迎えることも感じていたようでした。(獨協中・高ワンダーフォーゲル部顧問)
「獨協通信」第61号(平成15年12月10日発行)ひろばより転載