高い技術は,一つひとつの基礎の上に作られる 高梨富士三郎

「飯豊連峰」から「北八ツ」までの反省ということだが,実質的には月例山行まで含まれよう。反省となれば、第一に部員の質が問題となるが、部員の質は量と無関係ではない。量的な減少は質に影響する。

かって、高校生では無理と思われた冬季の「高妻山」の成功は過去の栄光であって、それをいまに求めることはできない。それよりか、確実な登山技術を要求したい。山歩きの初歩の技術が重要だ。科学的に充分ねられた計画と、部員相互の話し合いの態勢をつくることだ。

合宿も、夏季は7日間、冬季は5日間。その期間を形式的に終わらせているような態勢や考え方では進歩はない。消極的で形式的な取り組み方だ。不満である。いくつか問題点を列挙してみよう。

第一に練習法だ。日本の登山事故で特に多いのは転落だ。私たちの部にもこの危険はある。バランス、足のおき方・・・、これはある程度、練習でも消化できる。練習には体力をつけるのに重点を置いてはどうか。部員の体力低下は著しい。

第二に食料、第三に団体装備と個人装備だ。これについては、ザックのパックが完全にできていなければならない。不充分である。同時に団体装備の取り扱い方だ。これは部員の意欲の問題とも関係する。

反省というのは口先だけの反省はだれでもできる。必要なのは、身体での反省だ。全体としては危険に対する注意力がない。山行において、団体を解かさせ、目的地まで個人個人に歩かせたら、幾人が目的地まで達することができるだろうか・・・。

高い技術は、一つひとつの基礎の上に作られることを知るべきである。   1968年3月21日

DWV顧問 高梨富士三郎

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