シュイナードの作った2つのブランド

カリフォニア州のヨセミテの大絶壁「エルキャピタン」での”クリーンクライミング”など、ヨーロッパのクライミングからアメリカへ流れを変えたた立役者でもあるクライマーのイヴォン・シュイナードは同時に「現ブラックダイヤモンド」や「パタゴニア」の創業者でもあります。

イヴォンは少年の頃、狩猟のために鷹やハヤブサを調教する南カリフォルニア鷹狩団体に所属しており、岩壁の鷹の巣を取るための懸垂下降を教わったりしたことからクライミングに目覚めていきます。

1年中、週末にはどこかの岩を登るような日が続きますが、やがて舞台をカリフォルニアのヨセミテに移します。

ヨセミテ国立公園は「エルキャピタン」をはじめ渓谷にそそり立つ白い花崗岩の岩壁が特徴でクライマーのメッカにもなっている所でした。「エルキャピタン」は谷床から千メートルもある一枚岩でピトン(ハーケン)の量も半端ではなかったので、自作でビトンを作り始め、繰り返し使うことができるクロムモリブデン鋼を使ったピトンを開発します。イヴォンの作ったピトンは評判がよく、山仲間にどんどん広がり、1個1ドル50セントのピトンに注文が殺到するようになります。ピトンを作りながらクライミングする日々が続いていきます。やがて手作りでは製造が追い付かなくなり、道具や金型、機械を整えての量産の必要に迫られます。

そこで1965年、クライマーであり、鋭いデザイン感覚と美的感覚を持ち合わせた航空技師のトム・フロストとパートナーシップを結び、「シュイナード・イクイップメント」(後のブラックダイヤモンド)を立ち上げることになります。

1968年、当時既に「ザ・ノースフェイス」を売却していたダグ・トンプキンスに南米パタゴニアへの旅に誘われます。2人は南米を目指して未舗装のパン-アメリカン・ハイウェイをひたすら南下しパタゴニアを目指す旅に出ることになります。当時、人の気配がなく全くの未開の地だったパタゴニアの自然は2人の男に衝撃を与えました。その後、イヴォンとダグの人生は大きく変わっていくことになります。

1970年までには、シュイナード・イクイップメントは米国最大のクライミング・ギアのサプライヤーとなっていました。クライミング人気は同時にピトンなどによる岩の破損など環境が問題化されていきます。

自分たちの作ったギアが愛している自然を壊していることを目の当たりにして、ピトンの製造から段階的に手を引くことを決断します。

同時に登山ウエアとしてラグビーシャツを導入するなどウエアにも商品をシフトしていきます。ウエアも評判が良く、1972年アパレル部門の新たなブランドの「パタゴニア」を立ち上げることになります。

パタゴニアは順調に成長し、グローバルなブランドに成長していきます。その頃、製品の販路拡大を狙っていた「モンベル」の辰野勇はドイツでのパーティーで日本での販売代理店契約が終了していたことから日本から来たアイガーの2登を果たしたクライマーでもあった「モンベル」の辰野勇に声をかけ、相互に信頼を得てパタゴニアの製品の販売を任せることを即決します。1984年には相互に製品の販売を開始することになります。(その後1987年独自ブランドに全力を傾注する路線変更に伴って契約は円満解消することになります。)

1989年、ガイドを伴ったクライミング初心者がトイレ後のハーネスを正しく装着していなかったため雪崩事故により死亡するという事故が起こります。遺族が支払い能力のないガイドには請求できない補償をメーカーに請求してきたことから、保険金を賄うためにシュイナード・イクイップメントをマネージャーを中心とした社員に売却し、パタゴニアの経営に傾注することになります。シュイナード・イクイップメントは「ブラックダイヤモンド」へと進化していきます。

2011年にはダグラス・トンブキンスとイヴォン・シュイナードとの伝説のパタゴニアの旅をリスペクトして作られたドキュメンタリー映画「18℃SOUTH」が公開されていますが、これに1968年の記録や映画作成当時の二人も出演しています。

ザ・ノース・フェイスを創業したダグラス・トンプキンス氏との交友は長く続いていましたが、2015年、一緒にパタゴニアのヘネラル・カレラ湖で6人でカヤックを楽しんでいた時に強風と高波のために一緒に乗っていたカヤックが転覆し、イヴォンは助かりましたがトンプキンスは亡くなってしまいました。

トンプキンスの冒険は終わってしまいましたが、シュイナードの冒険はまだ続いていきます。


複数のネットでの記事を参照して記事を構成しています。検証ができていませんので、不正確な部分もあるかと思います。メーカーの思いを伝えられたらということで記事を作成しましたので、ご理解いただければと思います。

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