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今年の夏山の状況

田中廣明氏撮影

本格的な夏山を前に、各地で「山開き」や交通機関の運行開始などのお知らせが届いてきています。昨年は新型コロナの感染症の影響で登山道や山小屋の閉鎖があったりと、登山も感染予防のため自粛や対応など登山の在り方が問われた1年でした。

東京では明日7月12日から再度緊急事態宣言が8月22日まで発令され、埼玉県、千葉県、神奈川県では同期間のまん延防止重点措置が発令され、オリパラやお盆を含めた期間全ての不要不況の外出の自粛が求められている状況ですが、今年の夏山は各エリア登山者や山小屋に対して感染防止のガイドラインの遵守を求めた上での登山が開始されています。

北アルプスでは一部を除いて山小屋もガイドラインに沿って営業を開始しています。登山道も新型コロナ感染症予防の諸注意が提示され、全て開かれているようです。

中部山岳国立公園における登山について(新型コロナウイルス感染症)

山小屋における新型コロナウイルス感染症対応ガイドライン

南アルプスでは北岳をはじめとして昨年は山小屋も登山道も閉鎖されたために、ほぼ南アルプスは登山できない状況でしたが、今年は一部を除いて登山や宿泊が可能となっています。中央アルプスも同様の状況です。山小屋も完全予約で宿泊費も値上げされている所が多く、シーツ持参を推奨しているようですので、気を付ける必要がありそうです。

中央・南アルプス山小屋情報

富士山の静岡県側登山道が山開き

現在の画像ではありません

新型コロナウイルス感染拡大防止のため昨夏は登山道を閉鎖した富士山ですが、静岡県側の5合目から頂上までの3登山道(須走ルート 御殿場ルート 富士宮ルート)が今日(7月10日)から山開きになり、9月10日までの2カ月間富士登山が開始されます。

山梨県側から(吉田ルート)はすでに7月1日から山開きになっており、2年ぶりに四つのルートが全て開通となりました。山小屋についても新型コロナ対策をとりながら営業が開始されています。

関連記事

「Withコロナ時代の新しい富士登山マナー」ほか今年の富士登山についての記事

富士登山における安全確保のためのガイドライン

ガイドラインリーフレット

熱中症と一過性脳虚血性発作との違い(再掲載)

先日、北奥千丈岳の頂上で休んでいたところ少し離れた所で食事休憩をしていたご婦人が「気持ち悪い」とご主人に言っていたかと思ったら、立ち上がり際に倒れ顔面を岩に当てて出血されました。
すかさず近くで昼食の準備をしていた30代の男女が意識や両手足のしびれなどを確認し熱中症と判断しててきぱきと救急処置をしている様子に感心させられました。
聞こえて来た様子では二人は医者でも看護師でもなく、トレランをやっているだけですよと言っていました。
大勢で対処してもしょうがないかもと思ってこちらは見守っていただけでしたが、今にして思えば途中交代してあげるなどいろいろ出来ることがあったと思い反省しきりです。
さて、山でも中高年が多いこともあって病気などで倒れたりするケースも多くなっているようです。
4月の鍋割山の頂上でも心停止された人がいて、ヘリで緊急搬送している現場に遭遇しました。
これからの季節は熱中症で倒れたりするケースも多いのではないかと思われます。しかし、中高年の場合は特に同じような症状でも暑さと水分不足からくる熱中症ではなく、脳梗塞による一過性脳虚血性発作であるケースもあるようです。
症状がよく似ているということで熱中症と間違われ、手当が遅れて重大なことになる場合もあるようです。
熱中症なのか脳梗塞による一過性脳虚血性発作なのかを的確に判断し、対処する必要が求められます。
すでに意識がないよう場合については呼吸や脈を確認し、必要に応じて心肺蘇生をしなければならないでしょうが、意識がある場合についてホームページに「熱中症と一過性脳虚血性発作との違いの見分け方と対処の仕方」を掲載しましたのでご覧いただければと思います。
(2018年7月14日の記事を再掲載しました。)

木曽駒ヶ岳でライチョウの自然繁殖による雛誕生

かねてより環境省信越環境事務所では中央アルプスで絶滅したライチョウの個体群復活事業を進めており、自然飛来した1羽を手がかりに北アルプスからライチョウの卵や成鳥を移して定着繁殖を試みていました。

先月13日の時点では5組のペアを直接確認できたほか、ふんの量などからさらに2組のペアがいると推測されていました。その後、5組のペアのうち3組の巣で卵を温めていることが確認されていましたが、この度3つの巣で合計20羽の雛が誕生していることが確認されたということです。

定着に向けて、また一歩前進したようです。前回の試みでは孵化した雛はサルに食べられて全滅してしまったこともあり、親鳥と一緒にケージで保護しているということです。

関連記事 木曽駒ヶ岳のライチョウ

関東地方でもマダニ感染症

「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」の感染例が千葉県で確認されたことが国立感染症研究所と千葉県衛生研究所から発表されました。

今まで静岡県以西の西日本に限定されていたSFTSが千葉県で初確認されたということです。不明熱患者の242症例のスクリーニング検査を実施した結果、1名につきウイルス抗体が陽性であることが分かったということです。この患者は南房総に住んでいて2017年に発症したということで、発症前には移動歴がなく、マダニの刺し傷も確認されていることから現地で刺されたものと確認されましたが、日本紅斑熱陰性と診断されていたものです。

千葉県は関東地方では数少ない日本紅斑熱やつつが虫病のリケッチア症流行地ということですが、現在マダニが寄生するシカ、イノシシ、アライグマ、キョンなどの野生動物も増えてきていることからウイルスを持つダニも増えてきているのではないかと思われます。

SFTSは治療薬もワクチンもなく致死率が6〜30%と高いだけに、房総のみならず関東全域に広がっていく恐れもあり、登山の折にも気をつけていく必要がありそうです。

マダニ感染症の罹患者数が100人越え

尾瀬はミズバショウからワタスゲへ

福島、群馬、新潟、栃木四県にまたがる尾瀬国立公園は4月29日に山開きしましたが、すでにミズバショウの見頃は終わり、これこれからワタスゲへと移っていこうとしています。(写真は今の状況というわけではありません)

例年より雪解けが早く進んでいたということです。ヨッピ橋近くでフライング気味のニッコウキスゲが1株だけ開花しているそうですが、沼山峠から大江湿原でのニッコウキスゲの見頃は7月20日前後になりそうだということです。尾瀬入山にあたって

尾瀬戸倉方面から尾瀬沼へは6月13日から大清水    一    ノ瀬間の低公害車の運行が開始されています。砂利道の林道を歩かないで済むのはありがたいことです。 低公害車運行の概要と時刻表はこちらから

2020年の山岳遭難事故の概要

警察庁から2020年に全国で発生した山岳遭難の概要について6月17日発表がありました。

2020年に発生した山岳遭難事故は2294件(前年比237件減)、遭難者数は2697人(240人減)、うち死者は241名(8.9%)、行方不明者は37人(1.4%)、負傷者974人(36.1%)、無事救出者1445人(53.6%)だったそうです。

都道府県別の山岳遭難発生状況では長野県が183件と最も多く、次い で北海道176件、神奈川県144件だったということです。

目的別では遭難者2697人のうち、登山(ハイキング、スキー登 山、沢登り、岩登りを含む。)が75.6%と最も多く、次いで山菜・茸採りが 14.1%ということでした。

また、態様別では、道迷いが44.0%と最も多く、次いで滑落が15.7 %、転倒が13.8 %ということでした。

年齢層別 では80〜89歳が196人で7.3%、70〜79歳が 636人で23.6%、60〜69歳が511人18.9%、50〜59歳が44.4人で16.5%、40〜40歳が321人で11.9%、30〜39歳が231人で11.9%、20〜29歳が194人で7.2%だったそうです。

40歳以上が2115人と全体の78.4%を占め、また、60歳以上が1350人と全体の50.1%を占めていたそうです。 また、死者・行方不明者では、40歳以上が254人と全体の91.4%を占め、60歳以上が203人と全体の73.0%を占めていたそうです。

昨年は山岳遭難事故が大幅に減少したのは、新型コロナ感染拡大のため各地の山小屋や登山道の閉鎖や自粛のために山行自体が少なかったことが遭難件数の減少につながったものと考えられます。

「令和2年における山岳遭難の概要」警察庁生活安全局生活安全企画課

木曽駒ヶ岳のライチョウ

環境省では平成24 年1月から「ライチョウ保護増殖事業計画」により、ライチョウの保護増殖事業が進められており、絶滅したとされる中央アルプスに北アルプスから飛来した1羽のライチョウを定着させるべく活動が開始されています。

乗鞍岳から有精卵を持ち込んで木曽駒ヶ岳での繁殖を試みるなどしていましたが、孵化はしたもののヒナは猿に食べられ全滅してしまったため、昨年度は乗鞍岳から3家族計19 羽の個体を移送し、中央アルプスでの定着に向けて事業を推進してきました。

環境省では今年4月下旬から5月末までに実施した調査と一般登山者から提供された目撃情報によって、雄5羽、雌5羽の計10 羽の個体が確認され、5月中旬以降に三ノ沢岳、檜尾岳及び熊沢岳周辺においてそれぞれ少なくとも1個体が生息している痕跡が発見されているということです。これらから昨年度確認された中央アルプスの20個体のうち13 個体が生存しているようです。

雛の孵化(ふか)が見込まれる今月下旬から、同省は家族ごとにケージで保護する準備に取りかかるとともに、今後の調査結果及び繁殖状況(孵化した家族数、雛数)から総合的に判断して一部の家族を茶臼山動物園(長野市)と那須どうぶつ王国(栃木県)にそれぞれ移し、繁殖させて野生復帰させるという事業を進めていくということです。

入山料徴収の動き

2019年には「竹富島」、2020年には「妙高山・火打山地域」、2021 年からは「屋久島」と、法律や条例に基づいた入山料の徴収が開始され、富士山では入山料の義務化が加速し、大雪山や大山でも検討が進んでいます。

山を管理する行政は、財政難に加えて新型コロナウイルス対策の支出増などもあって、自然保護や整備等の費用を受益者に負担させる動きが加速してきています。

また、環境省と農林水産省は協同し、知床、日光、中部山岳、屋久島、西表石垣など5国立公園を世界水準の国立公園を目指すべく重点地域として位置づけ、「利用、保全、管理」の三つの観点から重点事業を策定し、その中で、「入域料(入山料)」や人数制限の導入も検討されています。

加えて、南アルプスは国連教育科学文化機関(ユネスコ)の生物圏保存地域「エコパーク」に登録されたこともあり、地元の山梨、長野、静岡3県の10市町村は登山道整備などの財源確保に向け、登山者からの入山料徴収を検討することで合意しています。今後、体制整備が進められていくものと思われます。

「駒込富士」登頂

2021年5月30日

駒込にある富士塚の富士神社

6mくらいの急な階段を登ると頂上にはコンクリート作りの拝殿がありした。標高は一番高い所で29mほどで、お鉢巡りもできます。

ちなみに、初夢の「一富士、二鷹、三茄子」のいわれがこの地にまとまっていて、昔からパワースポットだったようです。駒込はこの富士塚、近くにあった鷹匠屋敷(現在駒込病院)、そして「駒込茄子」が有名だったそうです。

S47年卒 手島達雄