「トピックス」カテゴリーアーカイブ

木曽駒ヶ岳のライチョウ

環境省では平成24 年1月から「ライチョウ保護増殖事業計画」により、ライチョウの保護増殖事業が進められており、絶滅したとされる中央アルプスに北アルプスから飛来した1羽のライチョウを定着させるべく活動が開始されています。

乗鞍岳から有精卵を持ち込んで木曽駒ヶ岳での繁殖を試みるなどしていましたが、孵化はしたもののヒナは猿に食べられ全滅してしまったため、昨年度は乗鞍岳から3家族計19 羽の個体を移送し、中央アルプスでの定着に向けて事業を推進してきました。

環境省では今年4月下旬から5月末までに実施した調査と一般登山者から提供された目撃情報によって、雄5羽、雌5羽の計10 羽の個体が確認され、5月中旬以降に三ノ沢岳、檜尾岳及び熊沢岳周辺においてそれぞれ少なくとも1個体が生息している痕跡が発見されているということです。これらから昨年度確認された中央アルプスの20個体のうち13 個体が生存しているようです。

雛の孵化(ふか)が見込まれる今月下旬から、同省は家族ごとにケージで保護する準備に取りかかるとともに、今後の調査結果及び繁殖状況(孵化した家族数、雛数)から総合的に判断して一部の家族を茶臼山動物園(長野市)と那須どうぶつ王国(栃木県)にそれぞれ移し、繁殖させて野生復帰させるという事業を進めていくということです。

入山料徴収の動き

2019年には「竹富島」、2020年には「妙高山・火打山地域」、2021 年からは「屋久島」と、法律や条例に基づいた入山料の徴収が開始され、富士山では入山料の義務化が加速し、大雪山や大山でも検討が進んでいます。

山を管理する行政は、財政難に加えて新型コロナウイルス対策の支出増などもあって、自然保護や整備等の費用を受益者に負担させる動きが加速してきています。

また、環境省と農林水産省は協同し、知床、日光、中部山岳、屋久島、西表石垣など5国立公園を世界水準の国立公園を目指すべく重点地域として位置づけ、「利用、保全、管理」の三つの観点から重点事業を策定し、その中で、「入域料(入山料)」や人数制限の導入も検討されています。

加えて、南アルプスは国連教育科学文化機関(ユネスコ)の生物圏保存地域「エコパーク」に登録されたこともあり、地元の山梨、長野、静岡3県の10市町村は登山道整備などの財源確保に向け、登山者からの入山料徴収を検討することで合意しています。今後、体制整備が進められていくものと思われます。

エベレストでも新型コロナ感染が拡大

エベレスト登山の渦中にある4 月下旬、ネパール側のベースキャンプでノルウェイの登山家とシェルパが新型コロナウイルスに感染し、複数人がヘリコプターでカトマンズの病院に搬送されています。30人から100人が感染したとの報道もあります。

中国政府は新型コロナの感染拡大防止の観点からネパール側から中国側に感染が及ばぬように「隔離線」を設けるなど予防策の強化を表明していましたが、中国側からの今季の登山を禁止する措置を発表しました。ネパール政府は現在までのところ禁止の措置はとっていないようです。

インド同様ネパールでも1日の新型コロナウイルスの感染者が8000人を超えるなどしており、医療物資も不足している状態で、エベレスト登山に使われる登山用酸素ボンベは持ち帰えって医療用に転用できるよう要請していたということでした。

ただでさえ酸素が薄い極度の高地であるため、呼吸器への影響が大きく、キャンプで感染が発生すればクラスターとなって感染が拡大し、重症化する懸念も高いので極めて深刻な状態となっています。

GW中の山岳遭難事故 / 2021年

警察庁の発表によると、4月29日から5月9日までの大型連休中に起きた山岳遭難は157件あり、191人が遭難し、そのうち死者は26人、負傷者は54人、行方不明者は3人ということでした。

都道府県別の遭難件数は、新潟(16件)、長野(14件)、神奈川、静岡、滋賀(各8件)で、ヘリコプターの出動回数は48回、投入された警察官は山岳遭難救助隊員らのべ1150人だったということです。

天候が不安定だったこともあるのでしょうが、過去5年でみると、死者・行方不明者は2017年と並び最多だったということです。

 

長野からの便り

田中廣明(S43年卒)さんから長野便りをいただきました。

飯綱山に登ろうと思っていたところ、グズグスの雪で撤退したそうです。翌日、斑尾なら大丈夫だろうと行ったところ、やはりグズグズて下りてきたそうです。

残雪の山は見た目はいいけど、登るのは・・・ということでした。

愛川展望台からの北アルプス
いもり池からの妙高山
あづみの公園からの常念岳
戸隠からの高妻山

S43年卒 田中廣明

今年の富士登山は?

3月24日、富士山の標高2100mの大沢崩れで降雨によって雪が溶けて土砂を巻き込んで流れ下るスラッシュ雪崩が発生し、山梨側の麓と5合目を結ぶ有料道路「富士スバルライン」の4~5合目間4カ所の計325メートルに土砂が流入しました。

雪解けとともに例年発生しているスラッシュ雪崩ですが、急に暖かくなったせいでしょうか、今年のような複数回の目立ったスラッシュ雪崩は2018年以来ということです。

さて、昨年は新型コロナの感染防止のために全ての山小屋が休業し登山道が閉鎖されてしまいましたが、今年はどうなるのでしょうか。

富士山の山小屋や関係団体は今年は夏山を開く事で準備を進めいるようですが、夏山シーズンに向けて国や山梨と静岡の両県、それに富士山のふもとの市町村などで構成する「富士山における適正利用推進協議会」はコロナ禍にあっての富士山を登る際のマナーを策定しました。(With コロナ時代の新しい富士登山マナー)

  1. 発熱・症状のある時は登山を行わない
  2. なるべく住居を共にしている少人数で登山
  3. 混雑する日や時間帯を避ける
  4. 山小屋は必ず事前予約
  5. 宿泊をともなわないご来光目的の夜間登山は行わない
  6. 最新情報をよく確認し、安全に配慮した余裕のある登山計画を立てる
  7. 感染対策グッズを準備
  8. 同行者以外の人とはソーシャルディスタンスを確保
  9. 必要に応じてマスクや手ぬぐいなどで鼻と口を覆う
  10. 登山道の渋滞時には交互登下山に協力を
  11. 呼吸を荒げないよう、自分のペースを維持
  12. 同行者以外との物品の共有、杭やロープへの接触は避ける
  13. トイレや売店を利用した後は、必ず手指消毒
  14. ゴミや吐物は密閉式の袋に入れて持ち帰る
  15. 体調不良時等は速やかに登山を中止して下山

それぞれの山小屋ではコロナ禍での開業に向けて、人数制限と予約の徹底、各所へのアルコール配置、食堂や寝床などの各部屋内を分けるためのパーティションの設置、使い捨てシーツの活用、換気システムの導入、寝床のスペースの改良など対策を進めているようです。

関係者はスバルラインの夜間営業停止や検温の周知徹底、観光バスやタクシー、マイカー利用者はスバルライン料金所で検温や体調確認の書類提出し、協力しない場合は通行させないことを求めるなどの要望を山梨県に求めているようです。

富士山の開山については5月に決定するということのようです。

「ナラ枯れ」が深刻になっています

コナラやコナラをはじめマテバシイなどドングリを実らせるナラ、シイ、カシなどのブナ科の樹木にカビの仲間である「ナラ菌」が入り込むことにより枯死する現象を「ナラ枯れ」と呼んでいます。

この「ナラ枯れ」は日本海側で顕著だった現象ですが、温暖化の影響もあると言われていますが、今や日本全国の里山や奥山に広がりを見せています。令和2年度には、42都府県で発生し、被害量は令和元年度から13万立方メートル増加して18.5万立方メートルとなってい流という事です。
実はこのナラを枯死させる原因菌になる「ナラ菌」はカシノナガキクイムシという5mmくらいの甲虫が元々持っていて、この虫がナラの木に穴を開けて住み着き、木の中でナラ菌を増殖させそれを食物にして生きているのです。


ナラに入り込んだカシノナガキクイムシはフェロモンで仲間を大量に招き寄せ、卵を産んで集中攻撃を開始します。穴を開けられたナラは樹皮から樹液を流し、次第にナラ菌自体によって水枯れを起こして夏場に枯死してしまうことになります。
次から次へ、山全体が茶色く枯れてしまうとうことにもなっています。また、大木ほど集中攻撃を受けることが多いようです。


多摩市などの都市部でも去年までに公園緑地の樹木で293本、街路樹で15本、学校の樹木9本の被害が報告されています。「明治神宮御苑」の森でも被害が出てきており、対策としてストラップを設置したり、ラップで包んで虫が入り込まないような対策を講じていますが、森林などでは十分な対策が取られないこともあって被害は深刻化しています。


以下の画像は「明治神宮御苑」の森に仕掛けられた捕殺用ストラップの様子です。

ラップで包んでキクイムシの侵入を防ぎます
キクイムシの捕殺用ストラップ
一番下の容器に集められます

「明治神宮御苑」はたくさんの人がお参りに訪れる賑やかな明治神宮の一角にあって、静かで落ち着いた佇まいのオアシス的な庭園です。

もともと熊本藩主の加藤家、後に彦根藩主の井伊家の下屋敷があった庭園で、明治時代になって宮内省の所管になりました。池や菖蒲園もあり、最奥には清正が作ったとされる珍しい横穴方式の井戸があり、バワースポットとしても有名になっています。

清正の井

韓国ではコロナ禍の中、登山者が急増

日本では昨年、新型コロナ感染防止の影響で一部山小屋や登山道が閉鎖されていることもあって、登山者やそれに伴う遭難事故が減少しました。しかし、同じコロナ禍の中にあって、隣国の韓国では昨年登山者がコロナ禍以前の2倍近くも増えているそうです。

新型コロナの感染状況や対策が違っていることもあるのでしょうが、昨年韓国での新型コロナ感染者は9万人、回復者は8万人、死者は545人に対して日本では感染者は43万人、回復者は40万人、死者は7818人と感染者と回復者数は5倍、死者は14倍になっています。(いずれも概数です)日本の人口が韓国の約2倍あるということを考えてもかなり数の違いがあります。そのことからも登山に対する意識や対応に違いもあるようですが、韓国でもジムなどでの運動が難しい中で、登山は比較的安全だということでに人気が集中してきているようです。

ソウル市で昨年発生した山岳遭難は前年に比べ約30%増えていて、特に週末の20-30代の登山初心者が増えいるようです。若者がデートでレギンスにスニーカー、スカートのような軽装で山に登ってけがをしたり、道に迷ったりする事故がて増えているそうです。中にはSNSの”映え”を狙っての事故も発生しているということです。

富士山の入山料が義務化へ

昨年、富士山は新型コロナの感染防止から山小屋は一斉休業し、登山すること自体が禁止されていました。平成26年から始まった1人1000円の保全協力金(入山料)も登山者の60%台に留まっていて、不公平感の解消が課題となっていました。

山梨、静岡両県などでつくる富士山世界文化遺産協議会の利用者負担専門委員会は1年間の登山禁止を経て、5合目より上に入山する場合は講習と認定手続きを受けた上で法定外目的税を納める制度の導入を16日に打ち出しました。

専門委員会の上部組織の作業部会が昨年11月、登山者から任意で集めている保全協力金を法定外目的税として徴収する方針を確認し、専門委で徴収方法を検討していたものです。これにより、新制度は15日に開催される作業部会を経て3月下旬の富士山世界文化遺産協議会で審議されるということで、入山料は税金化にシフトが切られたようです。

インド北部で大規模な氷河崩壊

この画像はカシミール渓谷のフリー画像
2021年2月7日インド北部で発生した大規模な氷河崩壊による鉄砲水は、水力発電所の工事現場にいた作業員など60名が死亡したほか、150人以上が行方不明になっているとAFPは伝えています。
ヒマラヤだけでなく、世界各国で温暖化の影響で氷河が融解し、氷河が後退(喪失)していっていることが問題になっています。また、氷河が融解したことにより、氷河湖が増えたり、氷河湖の水位がどんどん上昇して決壊する事例も増えてきているそうです。
1990年から2010年にかけて、アジアの高山地帯では氷河を水源とする氷河湖が新たに900カ所以上も形成されているようです。湖の水位が上がると、土手のようになっている湖の端のモレーンを越えてあふれ出したり、最悪の場合にはモレーンが決壊したりすることが起こっているということです。これが科学者の言う「氷河湖決壊洪水」(GLOF)で、地元の少数民族であるシェルパは、同じ事象を「チュ・グマ」(壊滅的な洪水)と呼んでいるそうです。今回の災害の原因の詳細はまだ明らかにされていませんが、今回のインドの氷河決壊も温暖化が原因ではないかと考えられるようです。
ヒマラヤの氷河は急速に融解しており、中央部と東部の氷河が2035年までに完全に消えるとする専門家の指摘もあります。また、アフガニスタン、パキスタン、中国、インド、ネパール、ブータン、ミャンマーにまたがる地域では地球温暖化のペース次第では、およそ5万6000カ所ある氷河の3分の1から3分の2が、2100年までに消滅するという研究結果もあります。
2019年にコロンビア大学のマウアー氏は1975年に撮られた衛星画像と、2000年、2016年の衛星画像を比較した研究を発表しているそうで、それによると、2000年以降に1年間で解けた氷河の量は83億トン、2000年以降は毎年1%の割合で消失、その量はオリンピックサイズのプール300万個の水量に匹敵し、2000年以降の年間融解量は、1975年から2000年の年平均の2倍になっているそうです。