「トピックス」カテゴリーアーカイブ

三頭山遭難事故

各地で季節外れの大雪が降った2018年3月21日、奥多摩の手軽に登れる人気の三頭山でヘリコプターで何人もが救助されるという遭難事故がありました。

「都民の森」からなら三頭大滝まで犬の散歩程度でも登れるとは言え、20センチもの積雪であるならば渋谷あたりでもスニーカーで歩くのはどうかなと思いますが、グループの中にはスニーカーにコンビニのカッパで参加していた人もあったようです。詳細は伝わってきていませんが、一行は午前8時に奥多摩駅に集合して急登の奥多摩湖側から登りはじめて、日没後の午後8時近くになってヌカザス峠から三頭山の間あたりで救助を要請したということです。頂上に向かう途中だったのか、頂上を登った後の下山途中だったのか定かではありませんが、日本在住の中国人10人と日本人3人、年齢は13歳から48歳、性別は男6人、女7人という国籍も性別も年齢もバラバラでSNSでの誘いに応じた見ず知らずのもの同士だったということです。大雪注意報の出ている中の軽率で無謀な登山でした。深夜にも関わらず救助にはたくさんの人が携わり、経費もかかったわけですが、幸い骨盤骨折をした方もいたようですが、全員無事下山することができたということです。

近頃SNSの普及により見知らぬ者同士が気軽に会ったり活動する機会も多くなってきていて、犯罪や事故に関わるケースも多くなっています。スポーツでも名前も知らない者同士が気軽に仲間になって誘い合って楽しいひと時を過ごすようにもなってきているようですが、登山となれば無責任に誘い合うことの危うさを認識しないといけないと思います。

登山用スマートフォンGPSアプリの活用

登山ほかフィールドスポーツでGPS専用機やGPSウオッチが近頃流行って来ています。しかし、機能も値段もそれなりのようです。GPS専用機の場合は高いもので8万円程度しますし、GPSウォッチの場合でも3万円程度はするようです。しかし、どうしても表示部分が小さいので地図に対照させて現在地やトレースをしたりということになると思った機能が得られない事が多いようです。それに比べてスマートフォンにはすでにGPSが内蔵されているので、無料アプリをインストールしてあらかじめ地図をキャッシュに保存しておけば圏外でも使うこともできますし、機内モード(消費電力をセーブできる)でも現在地を知ることもできるので、結構重宝するものと思います。また、その他色々な機能もありますので、是非一度試してみることをお勧めします。いまやGoogleMapが当たり前のように道探しのグッズとして利用されているように山でもそうなるのでしょうか。ただし、谷筋の場合ではGPS衛星を捕捉できない場合もあり、電池の容量不足などの問題もあり、補完できる複数の手段を持ったていなければならないのは自明のことと思われます。

代表的なアプリは「Geographfica」「FeildAccess」「ヤマレコMAP」の3つですが、いずれもiphoneでもAndroid携帯でも対応があります。いずれも制限なしの有料版と部分使用制限がある無料版がありますが、一般的な使用の範囲でなら無料版で十分事足りると思います。以下、Webで詳細をお確かめ下さい。

「Geographfica」 http://geographica.biz

「ヤマレコMAP」http://www.yamareco.com/yamareco/map

「FeildAccess」 https://internet.watch.impress.co.jp/docs/column/chizu/477479.html

栃木県教委による「学校安全登山のための取組」

栃木県教育委員会は20018年1月9日に先の春山安全登山講習会での雪崩事故を教訓として以下のような学校安全のための取り組みを発表した。

  • 登山計画作成のためのガイドラインを策定する。
  • 登山計画審査会に外部審査員を加えて審査内容の充実を図る。
  • 公益社団法人日本山岳ガイド協会が運営する登山届受理システム「コンパス」による登山届けの提出と共有化を図る。
  • 高校生の登山の実施状況等の確認と情報共有のため連絡協議会を設置する。
  • 経験のない、あるいは経験の少ない山岳部顧問対象の新任顧問研修会と一般登山部顧問に対しての研修会を実施する。
  • 国立登山研修所主催による安全登山普及指導者中央研修会、新設された高等学校等職員研修コースと高等学校等安全登山指導者研修会、全国山岳遭難対策協議会にも顧問を派遣するなど指導者の資質の向上を図る。
  • 経験の浅い登山部顧問が引率する場合で登山計画審査会においてガイド等の同行が望ましいと意見が付された場合は現地山岳ガイド等の専門家を派遣する。
  • 安全な登山に資するため指導者・生徒のためのハンドブックを作成する。
  • 安全登山のためビーコン、プローブ、シャベル、衛星携帯電話などの装備を貸し出す。
  • 春山安全講習会に参加した高校にスーパーバイザーを派遣し、太田原高校にはスクールカウンセラーを配置する。

遭難救助ヘリ有料化第1号(埼玉県)

先のトピックス(3月28日)でもお伝えした通り、今年3月埼玉県の防災ヘリコプターによる山岳遭難救助有料化する条例の改正案が成立したが同県は10月24日対象となるエリアと救助手数料徴収から減免除外される対象を告示した。

対象となる山岳エリアは小鹿野二子山、両神山、甲武信ヶ岳、日和田山、笠取山、雲取山になった。料金は5分ごとに5,000円で、救助に要する平均時間の1時間程度で計算するとと60,000円となる。なお有害鳥獣捕獲者、建設業者山小屋運営者、学校行事参加者等からは徴収せず、地震などの災害が原因の遭難者や生活保護受給者等は減免される。条例は18年1月1日から適用されることになる。


3月の記事はこちらからご覧いただけます。

メールマガジン2月号

 

今年の富士山登山者(環境事務所報告から)

今年の富士山の登山者数が環境省関東地方環境事務所から発表されました。
環境事務所では平成17年から各登山コースのそれぞれ8合目付近にカウンターを設けて登山者数を計測しており、今年度の結果がまとめられました。それによると今年の7月1日から9月10日までの登山者数の合計は約24.8万人だったそうです。
富士山の登山者数は平成22年の32万人をピークに減少傾向が続いており、昨年度は23万人だたので今年は1.4万人増ということで減少傾向に少し歯止めがかかったという状況のようです。海外からの登山者も割合として大きいのではないかと思われますが、世界遺産に登録されても登山者数は増加してはいないようです。
政府がユネスコに提出した世界遺産登録継続のための保全策にれば2018年7月までに努力目標としての1日あたりの適正な登山者数を算出するとしていますが、適正な登山者数をどれくらいに設定することになるのか悩ましいところでしょう。
コース別だと吉田ルートが約15.1万人、須走コースが約2万人、御殿場ルートが約1.5万人、富士宮ルートが約5.9万人というこでした。吉田ルートからの登山者が毎年多いようですが、その差は広がってきているようです。

那須雪崩事故検証委員会の最終報告書

平成29年3月27日那須雪崩事故検証委員会の最終報告書について

平成29年3月27日に茶臼岳(那須岳)で起きた雪崩遭難事故を受けて、平成29年3月27日那須雪崩事故検証委員会から平成29年10月15日に200ページに及ぶ最終報告書が発表されました。

報告書では、事故発生の要因として高体連及び登山専門部の「計画全体のマネジメント及び危機管理意識が欠如していたこと、従来の慣行に従った低い危機管理意識のまま講習会が実施されていたこと、またそれら講習会を見過ごしていた県教育委員会のチェックや支援体制の未整備だったこと、講師等の雪崩の危険(リスク)に関する理解不足と登山リーダー及び引率教員としての「個人の資質」に欠けていたことなどをあげています。

また、連絡体制の不備と携帯すべき装備の認識不足と不備についても触れられていました。

雪崩自体の発生原因については雪崩が雪上訓練により誘発されたものか、自然発生によるものかは特定できないとし、また個人の責任については言及していません。

事故発生時の状況と対応については、携帯電話が寒さで起動しなかったり、無線機のバッテリー切れなどの通信機器管理の不備もあり、救助要請が大幅に遅延したこと、参加者全員の情報や保護者の連絡先の一覧が作成・携行されておらず、警察、消防、山岳救助隊、生徒の保護者、引率教員の家族等に誰が連絡するのかといった緊急時の連絡体制も未整備であったこと、参加者がビーコンやプローブを装備しておらず、シャベルも常に携行していなかったことにも触れています。

また、この事故を起点として同じような事故を繰り返さないためにスポーツ庁に対して同委員会は次の7項目を提言しています。

【提言1  PDCAサイクルに基づいた計画のマネジメントと危機管理の充実】

【提言2 安全確保のための県教育委員会のチェック機能の充実】

【提言3 総合的な安全への対応力の向上を目指した顧問等の研修の充実】

【提言4 高校生等の安全な登山活動を支え、推進するための国、関係機関等の支援】

【提言6 全ての関係者の心のケアの推進】

【提言7 生徒の学ぶ意欲を喚起し、事故の教訓の風化を防ぐための取組】

具体的な項目としては次のことが述べられています。(抜粋)

  • 専門家の協力を得て、講義・実習等を取り入れ、初任の登山部顧問等の研修、経験者の研修等をきめ細かにかつ継続的に実施する。
  • 高校登山部活動の指針や計画作成のガイドライン等を作成する。
  • 天気図や地形図の読み方、指導上の留意点やポイント、登山等に潜む多様な危険の理解と危機管理、準備や計画、運営のマネジメント等に関する内容について、計画的に研修を行う。
  • 国立登山研修所や日本山岳・スポーツクライミング協会等の専門機関の研修に積極的に顧問等を派遣するなど、リーダー養成に努める。
  • 県教育委員会は、ビーコンやプローブなど、救出のための装備等を整備し、必要に応じて各高校等に貸し出せるようにする。
  • 高校生等と指導者のためのハンドブック(仮称)」を編集し、定期に改訂し、活用する。
  • 部活動の外部指導員の任命、行事等において専門家の支援や助言が得られる方策を検討し、積極的に専門家の参画を進める。
  • 県教育委員会は、事故に遭遇した生徒や御遺族並びに関係教職員等の心を癒し、QOL (生活の質の向上)と安心感や活動への意欲を醸成する心のケアの充実と継続を図る。
  • 事故の教訓の風化を防ぐために、慰霊の場を設置する。
  • 空き教室等を活用し、生徒が主体となり、これまでの栃木県の登山部活動の記録、事故の記録等を展示(掲示)するとともに、部活動参加者及び関心のある生徒が登山等に関する情報の収集ができるような拠点も設置する。
  • 定期に、各加盟校の活動や調査研究等の情報交換や交流ができるような機会を設定する。       以上、報告書の概要をまとめてみました。

スポーツ庁は高校生の冬山登山は原則禁止としており、当該教育委員会を通して各校にはその旨通知が出されていると思われます。

この報告書では「冬山」は一般的には12月から2月と考えられるものの、寒冷で雪崩の危険の高い山の状態は「冬山状態」であるということを講師や引率教員は直視しなければならなかったとしているものの、提言では冬山状態での登山について原則禁止ではなく、必要な手立てを講じなければならないとしています。

しかし、今回の事故や提言を受けてスポーツ庁から新たな方針が出されるものだと思われますが(既に出ているのかも?)、教育の場においてはことさら手のかかる面倒なことは避けるべく、スポーツ庁、教育委員会、各校各レベルで「冬山状態」である登山は原則禁止になってしまうのではないかとも思われます。

ちなみに、独協高校ワンゲル部では「冬山」は4、50キロもの荷物を担いで高妻山、八ヶ岳、仙丈岳、浅間山などに登り、「春山」は高妻山、八ヶ岳、金峰山・瑞牆山、北八ヶ岳あたりに登ってきた実績がありますが、すでにいずれも1971年あたりで「冬山状態」の登山は終了しています。

茶臼岳雪崩遭難事故検証最終報告書

DWV山行の実績

DWVとして現在までの山行の実績を現在までに分かっている情報を元に調べてみました。

山         域 山  名 山  行  数
奥多摩                                30 川苔山 9
棒ノ折山 7
本仁田山 1
陣場山 2
三頭山 1
御岳山 2
御前山 1
鋸山 1
鷹ノ巣山 3
大岳山 3
丹沢                                             17 表尾根 12
鍋割山 4
その他 1
東北                                              22 飯豊連峰 9
朝日連峰 4
岩手山・八幡平 6
八甲田 1
船形山 1
早池峰山 1
八ヶ岳                                         17 南八ヶ岳 13
北八ヶ岳 4
北アルプス                                   7 槍・穂高 5
白馬 1
劔岳 1
南アルプス                              10 仙丈岳 3
北岳 1
鳳凰三山 1
甘利山 1
守屋山 2
入笠山 1
鋸山 1
秩父                                               4 雲取山 1
国師岳 1
武甲山 1
両神山 1
上越                                                 8 高妻山 5
谷川 1
妙高山 1
巻機山 1
中央アルプス                              1 宝剣岳 1
浅間山およびその周辺          6 浅間周辺 6
奥秩父                                              4 金峰山・瑞牆山 3
乾徳山 1
三浦半島                                       1 鷹取山 1
御坂山塊                                       2 三ツ峠 1
御坂山 1
大菩薩山嶺                                1 扇 山 1
箱根                                                1 金時山 1
那須                                               1 茶臼岳・三本槍岳 1

2017年8月までのDATAから

山域とするとやはり奥多摩が30回と多く、新人歓迎などでもよく登られています。また、丹沢はボッカ訓練など、夏山のための準備登山としてもよく登られていたようです。積雪期には初期の頃は高妻山が多く、後には北八ヶ岳が多かったようです。DWVの特徴とすると夏合宿には飯豊連峰、朝日連峰、岩手山・八幡平などの東北の山を選んでいることがあげられましょう。標高はそれほどなくても緯度が高い分おとくな縱走が楽しめる割には登山も少なく、時間をかけてじっくり味わえるからこそ東北の山は高校生の夏山としても思い出に残る山であるのかもしれません。

山での捜索にドローンを活用

先日NHKのニュース番組でドローンを山での捜索に活用する取り組みについて取り上げられていました。番組では家族からの捜索依頼で民間の捜索隊とドローン運営会社が連携して捜索に当たったことを中心にまとめられていました。あらかじめ大型ドローンで木々の上から偵察した後、小型のドローンでモニターを見ながら沢筋を低空飛行で捜索していきます。夜になってビデオで細部を検討して手がかりを探して捜索範囲をどんどん絞って行きます。最終的に残った箇所をいよいよ地上部隊が捜索にあたり、結果、遺体の発見に繋げることが出来たという事例でした。

コントローラーとドローン間の電波の問題や風雨など問題は多いのでしょうが、捜索範囲が広範囲に渡っている状況や地上部隊が容易に行けない部分などを上から見るだけにしても捜索範囲を絞ることができるでしょうから有効な手立てになるのではないかと思われます。ヘリコプターが遭難者の救助に効果を発揮しているようにドローンも捜索に一役買うようになるのではないかと思われます。

栃木県茶臼岳(那須岳)での雪崩遭難事故について

今回の雪崩遭難事故は栃木県高校体育連盟主催の2泊3日のテント泊による「春山安全登山講習会」で起こった。講習会参加者は大田原高校をはじめ県内の高校8校で、生徒51名と教員11名の合計62名であった。教員の登山経験については委員長他20年以上のベテランもいたが、死亡した教員については冬山経験はゼロだったということもあり、引率教員の雪山経験値についてはばらつきがあったようだ。

事故当日は講習会の最終日にあたり、茶臼岳の登山が予定されていた。本来、県内高校の山岳部などが冬季に標高1,500メートル以上の山を登る場合は事前に計画書の提出を受けて県の山岳連盟や山岳遭難防止対策協議会、高校体育連盟、県警などで構成する県設置の「登山計画審査会」の事前審査を受けることになっていたが、春山安全登山講習会ということで審査は経ていなかった。

事故当日の朝、前日からの積雪は30センチ以上にもなっており視界も悪いことから、経験豊富な委員長、副委員長と他の教員1名の判断で茶臼岳の登山は中止になり、同時に那須温泉ファミリーゲレンデの上部斜面でのラッセル訓練に切り替えられることになった。生徒5名はゲーターを持参していなかったので、ラッセル訓練には参加せず、結局このラッセル訓練に参加したのは生徒46人と教師9人の計55人であった。

ラッセル訓練は那須温泉ファミリースキー場の上部樹林帯の斜面で学校ごとにまとまった形で5班に編成されて実施された。先頭の1班は登山大会等での実力校であった大田原高の生徒12名で教員が2名、2班は真岡高生徒8名と教員1名、3班は矢板東高生徒5名及び那須清峰高生徒4名と教員3名、4班は宇都宮高生徒8名及び矢板中央高生徒3名と教員2名、5班は真岡女子高生徒4名及び矢板東高生徒(女子)2名と教員1名で構成されていた。雪崩発生当時、先頭の1班はすでに樹林帯を抜けた尾根上にあり、下方に2班。3班と4班は1班の後方にあり、5班はゲレンデ近くで待機中であった。

雪崩は午前8時半ごろ、尾根上部の大岩がある「天狗の鼻」あたりで発生し、森林限界を超えた尾根で凍結した下部の弱層に前日からの降雪が30センチ以上あり、160mにわたり滑り落ちた表層雪崩だったことが分かっている。雪崩発生後、本部への報告は後方で待機していた5班の教員が2班の教員からの連絡を受け、9時過ぎに本部である旅館に直接駆け込んで事故を報告している。本部は9時20分に警察に通報することになる。通報を受けた警察が救助隊を編成して現場に到着したのは雪崩発生からすでに3時間半を過ぎていた。

救助隊が現場に到着した時にはまだ雪に埋まっていた被害者もいたようだが、事故発生から救助隊が到着するまでの詳しい状況は警察の捜査が入っていることからか生徒等の精神的な配慮からか報道を通しては伝わってきていない。

死傷者は1班の大田原高校の12名のうち7名が死亡、引率教員2名のうち1名が死亡、他班を含めて残りのほぼ全員が重軽傷を負っていた。うち、骨折など重症者は7人出ている。1班が雪崩本体に巻き込まれ、下方にいた2班が派生した雪崩に巻き込まれたようである。

この研修会への参加は5月にに行われる大会に参加できる必須条件になっており、春山安全登山を学ぶためのものだったこともあり、研修会責任担当が雪崩を予見できなかったかという業務上過失の容疑の捜査が続けられている。

ビーコンやゾンデ棒などの装備上の必要性はともかく、雪崩に対しての予知や巻き込まれた場合の対処の仕方を指導教員は理解し指導に当たれていたのか、また春山安全登山に必要な研修なされていたのかも問われる部分である。

責任者の記者会見では「絶対安全だと判断していた。」とは言うものの、登山経験も豊富な指導者であり生徒や保護者からも信頼されている教師でもあったことから、少なからずリスクや判断の不確かさは感じていたものの、組織としての責任を問われるということになればそのようにしか答えられなかったのかも知れない。いずれにしても、教員個人としては教え子を死なせてしまった責任は逃れられないことは自覚していたであろう。

後の捜査で、責任者は今回ラッセル訓練をしたエリアでの雪崩は起きないものと認識していたというが、今回雪崩が発生したエリアでもかつて雪崩が発生していたという地元の方の証言もあった。また今回の研修会にも参加している教員が7年前に同様の研修で怪我はなかったものの雪崩に巻き込まれている事故が発生していることも分かってきている。

「絶対安全だと判断していた」という指導者の言も、新たな事実によって本当に防げなかった事故なのかと遺族・保護者の心は揺れているのではないかと思われる。

ややもすると経験則に頼りがちなベテラン指導者と経験不足のまま生徒を指導しなくてはならない顧問教員、高校生の雪山登山の是非、安全登山に必要とされる装備品などの問題も考えて行かなければならないのだろう。

文部省はこの事故を受けて「冬山登山の事故防止に関する緊急通知」として高校生以下の冬山登山を原則禁止することを改めて都道府県知事と各都道府県教育委員会に所轄の私立高校並びに公立高等学校、関係山岳団体にその旨を周知させ徹底指導するよう通知を出した。ただし、冬山登山という漠然としたくくりで、時期、対象地区、活動範囲等については規定していないようだ。しかし、単に高校生の雪山を禁止して済ませるわけにはいかない。本当に安全登山に必要な技能と知識をどう伝え、実践させて行くか問われるところである。(HP管理人)


正確を期すべく得られた複数の一般的な情報を元に記述しましたが、不正確な部分も含んでいるかもしれないことをお断りしておきます。ぜひ、更に正確な情報をお調べいただけるようお願いします。

事故に巻き込まれて亡くなられた被害者のご冥福をお祈りするとともに遺族の方々にお悔やみ申し上げます。