紀行「スペイン巡礼の旅」ロングトレイル踏破 1/3 ・打矢之威

<1回/3回>   「プロローグ」

馬齢79年10ヶ月重ね、そろそろ終活の一環として念願のキリスト教聖地巡礼を実行することにした。

:2017年9月28日―10月4日(8日間)

ルート:スペインのガリシア州サリアよりサンチャゴ・デ・コンポステーラ(カミーノデサンチャゴ)寺院までの120キロの徒歩旅行

カミーノ・デ・サンチャゴはスペインの大西洋カンタブリコ海岸近くの聖ヤコブの聖地である。ヤコブ(スペイン名サンチャゴ)はキリストの12使徒の一人で、イエルサレムで断首された殉教者。弟子二人が遺体を隠し、流れ流れてスペインのガリシア地域に埋葬された。その地にサンチャゴ大聖堂が西暦813年に建立され、以後イエルサレム、バチカンと並びキリスト教の3大聖地の一つとなった。

私は叔母が関係するフランスのルルド辺りからピレネー山脈を越えて300キロの巡礼旅を計画していたが、1年半ほど前ネパールのエベレストトレッキング中、胸の苦しさなど身体の変調を体験し、高山病だろうと安易に考えていたところ、狭心症の前兆であることが判った。2度ステント設置の手術を受け、リハビリに努めたのでソロソロ巡礼旅を実行しないとその前にあの世行きになると焦り、主治医に相談したら「あんたはダメと言っても聞かないだろう。せめて盛大に保険をかけて行きなさい。救援費用、遺体搬送費も含めておくように。」と冷たい返事であった。

巡礼旅のフィナーレはサンチャゴ寺院から巡礼証明書(クレデンシャル)を発行してもらうことで終了する。其の為には最低115キロ歩くことが絶対条件である。途上、各地の教会、アルベルグ(公営簡易宿泊所)、バル(食堂付き雑貨店)等から一日最低2か所のスタンプを押してもらうことが必要である。

サリアはスぺインのガリシア州の小都市で、ここからサンチャゴ・デ・コンポステーラまで陸路120キロほどの道のりである。スペインでも貧しい農村が散在し、丘陵地帯(500-600m)と森林地帯が交互に現れる。ルート上の要所要所には巡礼路の標識である黄金色のホタテ貝の印が石柱に埋め込まれているのでほとんど迷うことはないが、早朝は暗いので何度か間違え脇道にそれたこともあった。

10月の始めとはいえ朝晩は寒いので、ウンドーブレーカーは必帯。その他2,000m級のトレッキング装備が必要であった。途上の民宿は共同シャワー、蚕棚のベッド、寝具は毛布又は持参の寝袋。巡礼者は男女雑魚寝、隣の鼾がうるさいのでウイスキーをひっかけて眠る。世界中から巡礼者が集まるので訳の分からない外国語がいたるところで聞こえる。

同行者は学生時代の同級生伊藤義明氏とその友人の河合宏、妙子夫妻、伊藤氏は私と同年、河合夫妻は60代後半、いずれも山歩きは慣れているので心強い同伴者であっが、足がそろわないので私は遅れがち。結局独り歩きになり、途中のバルやその夜の民宿で合流することになった。

当初一日当り平均25キロの行程で実働5日間と1日の予備日を取ったが、9月27日成田発予定のイベリヤ航空機が機体不備で1日順延、結局9月28日からの出発で1日短縮せざるを得なかった。従い平均1日30キロの強行軍となった。幸い天候には恵まれ、雨天はなくどんより曇っていたが涼しいので歩くのには好都合であった。

次回に続く

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